経営評価委員会開催状況平成28年度
平成28年度 第1回(平成28年7月7日(木))
1. 理事長挨拶
厚生労働省は、平成30年度から国保財政運営の責任主体を都道府県とする新たな国保制度の実施に向け、国と地方の協議の場である「国保基盤強化協議会の事務レベルワーキング」において議論を重ねており、平成28年4月28日には、「国保事業費納付金及び標準保険料率のガイドライン」や「国保運営方針策定要領」を示したところである。
また、国保中央会では新たな事務処理に対応するため、「国保保険者標準事務処理システム」の開発に着手していることから、本会としても、円滑な制度施行に向け、着実な準備を進めてまいりたい。
一方、本年2月末に開催された国の規制改革会議の健康・医療ワーキンググループにおいては、支払基金における改革の基本的な方向性として「現行の支払基金を前提とした見直しではなく、審査の在り方をゼロベースで見直すこと」等、今後の論点が整理された。
この流れを受けて平成28年4月に設置された厚生労働省内の有識者検討会において、年末までに議論を取りまとめることとされている。この議論については、国保連合会にも大きな影響を及ぼすことが想定されるので、引き続き検討状況を注視してまいりたい。
このような情勢の中、本会では第3次経営計画の目標達成に向け鋭意取り組んでいる。
本日は、第3次経営計画の初年度となる平成27年度における各計画事項の取り組み実績について、何とぞ十分なご審議を賜りたい。
2. 議事
- ①平成27年度における年度総括及び外部評価について
平成27年度における第3次経営計画の執行状況について実施主管部長から報告後、委員から説明内容に対する質問があった他、ご意見等をいただいた。
- ②平成27年度決算について
出納室から平成27年度の決算報告を行った。
3. 委員からの主要質問
- ①計画№1-1-1「審査の充実」の画面審査システムに係る対応強化として、昨年5月にリリースされた新機能について、審査委員の意見収集を行い、早急に改善すべきものについて国保中央会に改善要望を行ったとあるが、具体的にどういう問題があってどういう改善の結果、効率化されたのか。
- ②計画№1-3-2「介護給付適正化システムの有効活用による介護給付適正化の推進」の適正化システムの有効活用事例の提供では、江東区の協力を得て約6万円の削減効果を確認できたとあるが、仮に都内の全区市町村が実施した場合、どの程度の削減効果が見込めるのか。
- ③計画№3-2-1「国保総合システムの機器更改に係る次期国保総合システムへの移行」について、新しいシステムに移行することで、どういったことが改善されるのか。
- ④計画№1-2-3「第三者行為損害賠償請求収納事務の受託範囲拡大」について、第三者求償事務の取り組みを強化していくという国の通知を踏まえ、自転車事故以外に今後どのような取り組みを検討しているのか。
- ⑤計画№1-1-2「審査事務共助の充実」について、審査委員とのコミュニケーション向上ということで、審査委員への確認回数が400回と記載されているが、それが審査事務共助にどのように生かされているのか。
- ⑥計画№2-2-1「人材育成基本方針に基づく人材育成」に関連して、先般開催された厚生労働省内の有識者検討会において、厚生労働大臣から「専門集団から頭脳集団へ転機すべき」という主旨の発言があったことは聞き及んでいる。国保連合会には医療や介護の膨大なデータが存在しており、様々なデータを活用した分析や政策への提言等で貢献できるのではないかと思うが、そのための人材育成も含め、どのようにお考えなのか。
4. 質問に対する回答
- ①一例として、医療機関の請求傾向が分かる「傾向把握機能」がある。これは、レセプトの中に初診料、再診料、医学管理等と項目があるが、これらの項目ごとに請求が多い順番に一覧表示される機能である。レセプト1枚であれば問題ない場合でも、全体で見た際に請求が偏っているとなると、医療機関の傾向審査の対象となる場合があるので、そういった傾向が把握できる。この機能の問題点として、検査や投薬等で注目している項目があった場合に、項目ごとに請求が多い順番に表示されるため、あいうえお順やABC順にしてくれれば、自分の着目した項目をすぐに見つけられるからそのようにしてほしいと審査委員から要望があったので、早急に国保中央会に要望を行った。要望してから改修されるまでに時間はかかったが、審査時間の短縮に繋がったと考えている。
- ②保険者が点検をどの程度厳密に行うかにより効果は異なるが、江東区の事例だと、介護者に対しケアマネージャーが作成する居宅介護サービス計画の報酬である居宅介護支援費に、新規に居宅介護サービス計画を作成した場合のみ算定できる初回加算を、前回も算定していたというものを抽出したものである。抽出した中から実際に過誤調整になった割合を都内全域に当てはめると、概ね150万円の削減効果を見込んでいる。
- ③データベース製品の見直しにより類似作業処理の統廃合が図られ、また、外付けシステムに対するデータの連携方式の見直し等により、外付けシステムの運用を含めた電算処理時間が短縮される想定である。これにより、確定的なシステム運用とシステム運用経費の縮減が図れるのではないかと見込みを立てている。保険者における利便性向上の面では、画面の遷移や画面の統廃合、検索項目の追加等により、現行に比べて業務処理が効率的に行えると想定しており、保険者においても業務日程の幅を広げることができると考えている。
- ④今後は、損保会社等から業務経験を有する求償専門員を増員し、第三者求償事務の課題等に対する保険者における具体的な解決策の助言等を行いたいと考えている。
また、交通事故で国保の保険を使った場合には、被保険者は傷病届を保険者に届け出る義務があるが、なかなか周知されていないといった問題があるので、既に本会のホームページに記載はあるが、分かりやすいかたちで届け出義務があるということの情報掲載をしていきたいと考えている。
さらに、保険者で求償事務を担当されている方に対する研修の充実や求償事務の基礎的内容の助言、また、依頼に基づき保険者に出向いて個別に相談を受ける等、今まで以上に積極的に保険者を支援していきたいと考えている。
- ⑤審査事務共助を行う上で、審査委員と職員とで信頼関係を築くということが一番大事なことであると思っている。審査委員と信頼関係を築くことで、審査委員の要望に沿った、医療機関の請求傾向を把握した疑義付箋を「審査事務共助支援システム」という外付けシステムに設定することが可能となり、効率的・効果的な事務共助に繋げている。また、審査事務共助を行う上で、特に医療内容的なものについては、審査委員から具体的な治療方法や臨床上の経験からの考え方等を伺い、十分理解することで、新たな疑義付箋項目、的確な疑義付箋を貼付することが可能となる。
- ⑥厚生労働大臣の発言は、審査支払機関が保有するレセプトデータを将来の医療計画の中に活用するべきではないかということが根底にあると思っており、既に3回ほど開催された有識者検討会の委員の意見では、KDBに対する高い評価をいただいている。KDBでは国保・介護・特定健診の3つのデータを連携して持っているので、健診データに基づき医療機関においてどのような治療をして、それが介護にどう結びついているのかが全体を通して把握できる。我々としても、上手くデータを活用していくことが今後の国保連合会、支払基金も含め審査支払機関が考えなくてはいけない重要な視点であると考えている。
平成28年度 第2回(平成28年12月9日(金))
1. 理事長挨拶
平成30年度からの財政運営の責任主体を都道府県とする新たな国保制度については、新制度の施行まであと1年4か月となり、厚生労働省は本年10月6日に「国保事業費納付金等算定標準システム」の簡易算定版を配布し、東京都では、現在、本簡易算定版による試算を行っているところである。
厚生労働省は、年末までは納付金等の在り方を検討する上で重要な期間と位置付けており、施行準備業務は新たな局面を迎えているとしている。本会としても円滑な制度施行のため、東京都及び保険者と連携を強化し、着実に準備を進めていく。
また、厚生労働省に設置された「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」の進捗状況については、本年9月以降、ワーキンググループにより検討が進められていたが、11月16日からは本有識者検討会を再開し、ワーキンググループの検討結果を基に検討を進め、年内に取りまとめを行う予定と聞いている。
当面これらの議論は、支払基金の組織体制の問題を精力的に検討すると聞いているが、国保連合会にも少なからず影響を及ぼすことが想定されるため、引き続き検討状況を注視していきたい。
このような情勢の中、本会では第3次経営計画の目標達成に向け鋭意取り組んでいる。
本日は、平成28年度上半期における各計画の取り組み実績について、何とぞ十分なご審議を賜りたい。
2. 議事
平成28年度上半期における執行状況及び外部評価について
平成28年度上半期における第3次経営計画の執行状況について、実施主管部長から報告後、委員から説明内容に対する質問があった他、ご意見等をいただいた。
3. 委員からの主要質問
- ①計画№1-1-2「審査事務共助の充実」について、診療科毎のシステムチェック項目を追加する際のプロセスはどのようになっているのか。
- ②計画№1-2-2「保険者が行うデータヘルス計画に係る支援」について、全国の保険者のKDBシステムへの参加状況はどのようになっているのか。
また、平成29年1月に予定している当該システムの機器更改とは、どのような内容か。
- ③計画№1-2-1「国民健康保険料(税)収納率向上の支援」について、今年度からの新たな取り組みとして、保険者の収納率向上に向けた先進的な取り組みや他の保険者の参考となり得る好事例の発表等を行ったと説明があったが、好事例とはどのような内容なのか。
- ④計画№3-2-2「新たな国保制度に向けた標準システムの導入及び支援」について、資格情報等を都道府県単位で管理する国保情報集約システムの運用・管理はどのような経緯で国保連合会が担うことになったのか。
- ⑤計画№1-1-1「審査の充実」について、厚生労働省の有識者検討会における議論に関連して、支払基金と国保連合会の審査における差異の見える化や縮小に向けて、どのような取り組みが必要になると考えているか。
- ⑥計画№1-3-2「介護給付適正化システムの有効活用による介護給付適正化の推進」について、国では介護給付費の伸びの抑制について様々な検討を進めているところであるが、国保連合会において介護給付の適正化に繋がるような新たな事業等を検討されているのか。
4. 質問に対する回答
- ①審査課、審査事務共助指導課、再審査課職員がそれぞれの立場で審査委員と審査内容、審査結果、審査項目等の確認や意見調整等を行い、診療科別事務局3者打ち合わせにおいて、システムチェック項目に追加したい事例・症例を精査する。その後、当該診療科の審査委員を交えた会議等にて決定している。
- ②KDBシステムに参加していない保険者がある都道府県は7都府県、未参加の保険者数は12保険者である。また、KDBシステムの機器更改については、2段階で行うこととしており、KDBシステム単体のサーバの更改を12月9日、他システムと共有するストレージは12月末の更改を予定している。
- ③今年度は、好事例として単年度のみならず継続して高い収納率を維持しつつ、更に収納率を延ばしている保険者の取り組みと過去に厚生労働省の収納モデル事業に取り組み、携帯電話やインターネットを利用した支払等、様々な納付環境の整備が進んでいる保険者から発表していただいた。
- ④国保情報集約システムは、国保の資格情報を都道府県単位で管理し、高額療養費の該当情報を同一都道府県内の市町村で引き継ぐためのシステムであり、当該システムで保有する資格情報は、保険者からの委託により、国保連合会が高額療養費の計算業務等を行うために必要となる。このため、次期国保総合システムとも密接に連携する必要があり、国保連合会が国保情報集約システムの運用・管理を行うことが実務面で効率的であることが主な理由ではないかと考えている。
- ⑤47都道府県の国保連合会における審査委員会でどのような基準とするか、また、支払基金支部とどのように合わせて行くのか等を考える必要があり、国保連合会、支払基金支部それぞれの審査委員間の見解の相違を事務方がどう合わせるか等は課題と考えている。また、支払基金との審査基準の統一化に関しては、以前から本会と支払基金東京支部における「社保と国保の連絡調整会議」や本会と支払基金東京支部に関東信越厚生局、東京都福祉保健局を交えた「診療報酬の適正化連絡協議会」を開催しており、情報交換等を行っている。今後は、これまでの取り組みに加えて審査委員の裁量により調整されていない部分が多くある医療的な内容についても調整を図っていきたいと考えている。
- ⑥保険者によっては、経常業務が多忙な中、適正化事務に十分な人員を確保できない等、適正化事務が積極的に実施されていないのではないかと推測しており、本会としては、保険者の実情を踏まえ、縦覧点検や医療情報との突合等の保険者が行う適正化事務を積極的に支援していくため、保険者事務の習得や本会職員の育成等を強化していく必要があると考えている。
このページについてのお問い合せ先企画課 企画係03-6238-0138